特許 令和3年(行ケ)第10001号「マイクロディスプレイデバイス用の列バス駆動方法」(知的財産高等裁判所 令和3年10月28日)
【事件概要】
本件は、特許出願拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決が維持された事例である。
▶判決要旨及び判決全文へのリンク
【争点】
主な争点は、補正発明は、引用文献に記載された発明であり、新規性を有さず、特許出願の際独立して特許を受けることができないといえるか否かである。
【結論】
引用発明は、補正発明の「各ノードが順次時間的に駆動されるように、前記2つ以上の制御可能バスバッファの直列接続されたストリングにおいて各制御可能バスバッファを順次有効化することであって、前記制御可能ローカル出力バッファが有効化中のときに少なくとも関連するノードが有効化中であるように、前記制御可能ローカル出力バッファのそれぞれを、前記制御可能バスバッファの前記順次有効化の順番でかつこの順次有効化と同期して順次有効化すること」との構成を有するといえる。また、補正発明(請求項1)において、「有効化コントローラ」については記載されていないのであるから、引用発明が原告主張の「有効化コントローラ」を含まないからといって、補正発明が「バッファ有効化プロセス」の構成を有する点で引用発明と相違し、新規性を有するということにはなり得ない。したがって、補正発明は新規性を有さず、独立特許要件を満たさないとした本件審決の判断に誤りはない。
【コメント】
原告は、本件審決が請求項1のみを審理し、他の請求項の審理をしていないことは審理不尽であると主張したが、判決は、特許法は、一つの特許出願に対し、一つの行政処分としての特許査定又は特許審決がされ、これに基づいて一つの特許が付与され、一つの特許権が発生するという基本構造を前提としており、請求項ごとに個別に特許が付与されるものではなく、複数の請求項に係る特許出願であっても、一部の請求項に係る特許出願について特許査定をし、他の請求項に係る特許出願について拒絶査定をするというような可分的な取扱いは予定されていない(最高裁判所平成19年(行ヒ)第318号参照)として原告の主張を採用しなかった。