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知財判決ダイジェスト

特許 令和4年(行ケ)第10019号「多角形断面線材用ダイス」(知的財産高等裁判所 令和4年11月16日)

【事件概要】
 請求項1ないし12に係る発明(以下「本件各発明」という。)は第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとして、特許無効審判請求を不成立とした審決を取り消した事例。
判決要旨及び判決全文へのリンク

【主な争点】
 本件各発明の発明特定事項における「略多角形」が第三者の利益が不当に害されるほどに不明確か否か。

【結論】
・・・特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載によると、「基礎となる多角形断面」とは、従来技術における開口部(角部を丸める積極的な処理をしていないもの)の断面を指すものと解される・・・本件各発明の「略多角形」とは、本件各発明の効果(開口部の角部に潤滑剤がたまりにくくなること)を得るため、その角部を丸める積極的な処理をしていない開口部につき、その角部の全部又は一部を丸める積極的な処理をした図形をいうものと一応解することができるものの、客観的な形状からは、本件各発明の「略多角形」と「基礎となる多角形断面」とを区別することができず、また、「基礎となる多角形断面」の角部にどの程度の大きさの丸みを帯びさせたものが本件各発明の「略多角形」に該当するのかも明らかでなく、本件各発明の技術的範囲は明らかでないというほかないから、本件各発明の「略多角形」は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であると評価せざるを得ず、その他、本件各発明の「略多角形」が明確であると評価すべき事情を認めるに足りる証拠はない。

【コメント】
 発明特定事項が不可避的に生じたものなのか、意図的に生じさせたものなのか、明確に区別できないため、ある事物が発明の技術的範囲に属するか否か判別できない場合があり得る。本件はそのような事例に該当するように思われる。

 本件明細書には、1辺4mmの四角形断面の開口部の角部を曲率半径が0.8mm程度に丸めることが一応記載されてはいたが、これだけの開示では、どの程度丸めたら上記本件各発明の効果が得られるようになるのか客観的に明らかでなく、基礎となる多角形断面との差異が不明である旨判示された。発明を特定するに当たって、「約、略、実質的に」などの範囲を曖昧にさせる表現を使用した場合に、直ちに発明が不明確となるわけではないが、使用する際には、客観的にその範囲が理解できる程度に明細書及び図面に記載しておく必要がある。

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