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[特許/欧州] 欧州単一特許制度の基礎知識(1)

はじめに
欧州において40年以上に亘って議論されてきた欧州単一特許制度の開始が、ようやく現実のものとなろうとしています。2022年1月18日、オーストリアが「統一特許裁判所協定(UPCA)の暫定適用に関する議定書(PPA)」を批准したことで、UPCAの暫定適用が始まっており、現在、裁判官の任命やシステムの整備など本格運用開始に向けた準備が進められています。
今後、ドイツがUPCAの批准書をEUに寄託することで、その3-4か月後に欧州単一特許制度の本格運用が始まります。ドイツは、本格運用開始に向けた準備の目途が立った時点で批准書を寄託する予定ですが、本稿執筆時点(6月中旬)ではドイツの批准書寄託に向けた新たな動きは見られません。
欧州単一特許制度の開始に備えて、今後、複数回の連載で制度概要を下記のセクション1-7に分けて解説して参ります。みなさまの理解の一助になれば幸いです。

1.欧州単一特許制度の概要
2.単一特許の概要
3.統一特許裁判所の概要
4.欧州単一特許制度の開始時期
5.サンライズ期間までの検討事項
6.オプト・アウトの検討に関するまとめ
7.審査が最終段階に達した欧州特許出願に対する経過措置

1.欧州単一特許制度の概要
 欧州単一特許制度には、参加国に単一の特許を付与する「単一特許(UP)」に関する制度と、特許権侵害や特許無効等に関する裁判手続きを統一する「統一特許裁判所(UPC)」に関する制度が含まれます。セクション2,3において、それぞれ説明したいと思います。

2.単一特許の概要
 「単一特許」は、欧州における特許取得のための「新たな選択肢」を提供するものです。これまで使われてきた「国内特許」と「従来型欧州特許」に加えて、「単一特許」が新たに加わり、特許取得の選択肢としてこれら3つが併存する形になります。

なお、「単一特許」は、制度の参加国において単一の効力を有する一つの特許権を与えるものであり、「単一効特許」とも訳される場合があります。

 (1)単一特許の効力は?

《図1:単一特許制度参加国(17) (第1世代)》

単一特許の効力が発生する範囲は、当初はEU加盟全27か国のうち既に制度批准済みの下記(i)の17の参加国の予定です(EPC締約国全てでもありません)。

(i)単一特許制度参加国(17か国)
オーストリア、ベルギー、ブルガリア、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポルトガル、スロベニア、スウェーデン

(ii)単一特許制度署名国で未批准国(7か国)
キプロス、チェコ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、ルーマニア、スロバキア

(iii)単一特許制度未署名のEU加盟国(3か国)
スペイン、クロアチア、ポーランド

参考までに、EPC締約国、拡張国、認証国は下記の通りです。

《図2:EPC締約国(38)と、拡張国(2)、認証国(4)》

(iv)EU加盟国ではないEPC締約国(11)
アルバニア、スイス、アイスランド、イギリス、リヒテンシュタイン、モナコ、マケドニア、ノルウェー、セルビア、サンマリノ、トルコ

(v)拡張国(2)
ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ

(vi)認証国(4)
モルドバ、モロッコ、チュニジア、カンボジア

(2)単一特許は将来異なる世代を持つ
 単一特許は、EPOによる単一的効力の登録日に制度に参加している参加国をカバーします。単一特許制度の批准は、今後も段階的に行われる可能性が高く、異なる領域をカバーする異なる世代の単一特許が存在することになります。

後日、ある国が参加した場合、前の世代の単一特許の効力が拡大するものではありません。

(3)単一特許を取得するには?
 出願から特許公告までの手続は、従来の欧州特許出願と同じです。

(4)単一特許を取得するための手続は?
 特許公告(publication of the mention of the  grant)から1か月以内に欧州特許庁に対して所定の請求を行います(65条(1)EPC翻訳文提出期間である月以内よりも短いです)。

(5)単一特許を指定した場合の翻訳文提出
 移行期間中(6年間の予定で最長12年間まで)は、欧州特許の翻訳文提出が必要となります。

欧州特許が英語の場合・・・・・・任意のEU公用語への全訳
フランス語又はドイツ語の場合・・英語への全訳

(6)単一特許の維持年金は?
維持年金の合意がなされた時点で、従来型欧州特許のバリデーションが多かった上位4か国(ドイツ、フランス、イギリス、オランダ)の維持年金の総額の水準で設定されています。イギリスが制度に不参加となったことから、その地位がイタリアに置き換わったとしても、イギリスとイタリアとでは維持年金の差は小さいため、調整なしでこの維持年金が採用されそうです(現在、公式な発表はなされていません)。参考までに、下記の表には単一特許だけでなく、従来型欧州特許による維持年金の額も示しています。


【出典】「ホワイトペーパー 欧州統一特許制度の基礎知識」(Winter, Brandl – Partnerschaft mbB)
https://wbetal.de/wp-content/uploads/2022/04/Whitepaper_UPC_2022_03_18_JP.pdf

(7)単一特許の主な特徴
・単一的な権利で、全ての参加国に同等の効力あり
・訂正、譲渡、取消、失効の効果は全参加国に及ぶ(個々の参加国を削除できない)
・個々の参加国に対してライセンスは可能
・取消や訂正があれば、その範囲で初めから不存在
・管理上の負担が軽減
EPOへの1回の年金支払いで17か国の特許維持が可能
名義変更や実施権登録も17か国について1回の手続で可能

 

 

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