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[特許/インド]特許規則改正

 2024年3月15日、インド特許庁は特許規則を改正し、同日に施行した。改正された特許規則(改正特許規則)は、2023年8月22日に公表された特許規則改正案に基づいている。主要なポイントを以下に示す。

1.対応外国出願に関する情報開示義務(特許規則12(2))
 特許法第8条には、対応外国出願に関する情報開示義務が規定されている。同条(1)には、対応外国出願に関する明細を記載した陳述書、及び当該明細を書面で長官(Controller)に随時通知し続ける旨の誓約書を提出する必要があることが規定されている。これらの陳述書や誓約書はForm 3により作成し、インド特許出願時、または出願日から6月以内に提出する必要がある(特許規則12(1),(1A))。この点に変更は無い。一方で、その後のForm 3の提出期限に関する特許規則12(2)が修正されており、従来は対応外国出願の「出願日から6月」とされていたところ、改正特許規則では「最初の拒絶理由通知書の発行の日から3月」に修正されている。

 このように、現地代理人からのニュースレターによれば、改正特許規則により、適切な理由により審査官から提出を要求される場合を除いて、Form 3は以下の2回提出すれば足りるとされており、負荷の軽減が図られている。

  • インド特許出願時、または出願日から6月以内(従来と変わらず)
  • 最初の拒絶理由通知書の発行の日から3月以内

2.審査請求期限(特許規則24B(1))
 特許規則24B(1)には、出願の優先日または出願日の何れか先の日を起算日とした審査請求期限が規定されており、従来は「48月以内」等と規定されていたが、改正特許規則では「31月以内」に変更されている。改正後の審査請求期限は、インド出願日(PCT出願の場合はインドへの国内移行日)が2024年3月15日以降の出願に適用される。

 PCT出願であってインドへの国内移行が31月の国内移行期限になされる場合、審査請求はインドの国内移行と同時に提出することを意味する。なお、項目5にて詳述するが、従来は国内移行や審査請求は延長の対象から除外されていたが、改正特許規則では、除外される対象が列挙されなくなったため、国内移行や審査請求についても延長が可能である。

3.年金納付の割引(特許規則80)
 特許法第53条には、特許の存続期間と更新手数料について規定されている。特許規則80には、当該第53条に基づく更新手数料の詳細について規定されているが、改正特許規則では、4年分以降の更新手数料を、前もって一括で電子的に納付(e-filing)する場合には、庁費用が10%割引される旨が追記されている。

4.インドにおける特許発明の商業的実施の程度に関する陳述書(特許規則131、様式27)
 特許法第146条には、出願人はインドにおける特許発明の商業的実施の程度に関する報告書を提供する義務がある旨が規定されている。特許規則131には、当該報告書の提出頻度について規定されており、従来は特許付与された年度の次の会計年度から「毎年度につき1回(once in respect of every financial year)」、当該年度の満了から6月以内に提出が義務付けられていたが、改正特許規則では「3会計年度につき1回(once in respect of every period of three financial years)」、当該3会計年度の満了から6月以内に変更されている。

 現地代理人のニュースレターによれば、特許付与されたものについての当該報告書の提出義務の具体的なスケジュールは以下とされている(表は現地代理人のニュースレターに記載されていたものの和訳)。

特許付与

3会計年度の期間

次の実施報告書の提出期限

2022年4月1日より前

(2023年9月30日までに最後の実施報告書が提出されていると仮定)

2023年4月1日

– 2026年3月31日

2026年9月30日*

2022年4月1日- 2023年3月31日

2023年4月1日

– 2026年3月31日

2026年9月30日

2023年4月1日- 2024年3月31日

2024年4月1日

– 2027年3月31日

2027年9月30日

2024年4月1日- 2025年3月1日

2025年4月1日

– 2028年3月31日

2028年9月30日

*この点については、改正特許規則に基づく複数の現地代理人の理解であり、インド特許庁により明確な情報の公等表があれば更新する。

 また、上記報告書は、様式27により提出する必要があるが、改正特許規則では、特許発明がインド国内で実施されたか否かをチェックすればよい。実施している場合でも、これまで要求されていた実施の詳細の記載は不要となった。また不実施の場合は、様式27に列挙された該当する理由のボックスにチェックをするか、直接理由を記載する。今回の改正により、新たに「ライセンスの意思があるかどうか」の項目が設けられている。

 なお、特許製品がインドに輸入されていることは不実施の理由にはならない旨が明らかにされている。

<新しい様式27(様式27より抜粋)>

5.所定の期間を延長する権限(特許規則138)

 特許規則138には、「何れかの行為をし、それに基づく手続きの実行のために本規則に規定する期間」について、長官が延長する権限を有している旨が規定されているが、延長の対象とされる手続から例えば以下の手続き等は除外されている。

  • 規則20(4)(i)の国内移行
  • 特許規則24Bの審査請求
  • FERへの応答期間
  • 規則80(1A)の年金納付

 改正特許規則では、除外される手続の記載が削除された。また、従来は、延長期間の上限は明記されていなかったが、改正特許規則では「6月を限度とする」として、延長期間の上限が明記されている。その他、改正特許規則に示されている延長費用は以下の通りである。

手続を行う主体

電子的な納付

(インドルピー)

物理的な納付(physical filing)

(インドルピー)

自然人、スタートアップ企業、教育機関

10,000

11,000

上記以外の企業等

50,000

55,000

 

※1インドルピー=1.82円(2024年3月21日のレート)

[出典]
インド特許庁「NOTIFICATION New Delhi, the 15th March, 2024」(PDF)
インド特許庁「NOTIFICATION New Delhi, the 22nd August, 2023」(PDF)
インド特許庁「Form 27」(PDF)
インド特許庁「Form and Fees
日本特許庁「インド 特許法 2017年6月23日公布(和訳)」(PDF)
日本特許庁「インド 特許規則2003年 2017年改正(和訳)」(PDF)

 

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