[意匠/中国] 「GUI関連意匠出願ガイドライン」の概要
1.はじめに
中国国家知識産権局(CNIPA)は2025年12月、「GUI関連意匠出願ガイドライン」を公表しました。本ガイドラインは、2023年の専利審査指南改訂に伴うGUI意匠の保護要件を明確化し、出願実務の質を向上させることを目的としています。本稿では、ガイドラインの記載に基づき、その概要を紹介します。
2.GUI関連意匠の保護対象(第一章)
GUI意匠が保護されるための要件が、具体的な図例とともに示されています。
①製品をキャリアとすること:意匠は「物品の外観」であるため、単なるアイコン画像は不可ですが、電子機器の画面上に表示される操作用アイコンは保護対象となります。
②新しい意匠であること:ありふれた丸形数字キーを並べただけのスマホのパスワードロック解除画面や電話のダイヤルキーパッドなどは、当該分野で見慣れたデザインであり、新規性を欠くため不可とされます。
③インタラクションに関連すること:ユーザーの操作(タップ、スワイプ、音声等)に応答する画面が対象です。壁紙、起動画面、ソフトウェアの歓迎画面、単なるウェブサイトのレイアウトは不可です。
④独立した完全な意匠単位であること:部分意匠として出願する場合も、視覚的に独立した領域を形成する必要があります。任意に切り取られた不完全な表示枠は不可です。
⑤ゲーム画面の除外:ゲームのプレイ画面等は一律に保護対象外となります。
3.出願書類の要件と提出方式(第二章)
実務上、出願書類の記載方法には特に注意が必要です。
・製品名称:用途、GUIの名称、適用製品を明記する必要があります(例:「携帯電話のモバイル決済GUI」)。「通話用GUI」のように製品が欠けたり、「スマホのインタラクションGUI」のように用途が上位概念すぎたりするのはNGです。製品を特定しない場合は「電子設備」と記載し、動的GUIの場合は「動態」の文字を含めます。
・図面と文字の扱い:GUIが画面内で占める割合が小さい場合は拡大図の提出が求められます。また、GUI内の文字はそのまま残すか「×」で置き換えます。ただし、全て「×」にすると用途やインタラクションが不明確になる場合は、必要な文字を残す必要があります。
・全体意匠と部分意匠の選択:GUIのみを保護したい場合、部分意匠制度の活用が推奨されます。部分意匠には「製品を含む方式」と「製品を含まない方式」があります。製品を含まない方式では、GUIのみを図示し、製品名称を「電子設備の~」とすることで、スマホやPCなどあらゆる端末に適用可能な広い権利を狙うことができます。
・動的GUI:主視図に加え、変化の順序に従って「変化状態図」を提出します。
4.複数画面および類似意匠の出願戦略(第三章)
1件の出願に含めることができる範囲についても明確化されました。
・複数画面の扱い:画面遷移を伴うGUIについて、変化の方向が明確なものは1つの意匠として出願可能です。一方、遷移の方向が不確定であるものは、原則として1つの意匠にはできず、類似意匠として合案出願(一括出願)を検討する必要があります。
・類似意匠の要件:同一製品かつ類似の意匠であることが求められます。製品を含まない方式(電子設備)で出願した場合、縦横比が異なる画面(例えば、縦長のスマホ用画像と、横長のタブレット用画像)であっても「同一製品」とみなされます。また、動的GUIの類否判断では、各画面のレイアウトだけでなく、変化の過程や動的トレンド全体を総合的に考慮します。部分意匠の類否判断では、保護を求めない部分(破線部分など)の形状や色彩は比較対象から除外され、保護を求めるGUI部分の視覚的効果が重視されます。
5.その他の注意事項(第四章)
・コンテンツ画面の除外:動画再生画面の映像部分や写真などの具体的なコンテンツ部分は意匠の構成要素とはみなされません。図面を作成する際は、これらの領域を空白、「×」、単一色ブロック、または半透明カバーで表現する必要があります。
・地図の扱い:ナビゲーション画面などで具体的な地図を含む場合、実際の地図は「参考図」にのみ表示し、主視図では保護対象から除外することが推奨されます。
・他人の権利との抵触回避:GUI内に特殊標章(国章や五輪マーク等)を使用する場合は許可証明が必要です。また、他人の著作権、商標権、肖像権等との抵触を避けるため、必要に応じて人物画像等をぼかし処理するなどの対応が求められます。
6.おわりに
本ガイドラインにより、中国におけるGUI意匠の審査基準がより具体的かつ実務的になりました。ただし、実際の審査実務に接すると、いまだ不明確・流動的な部分があるという印象を受けています(2026年6月現在)。特に、上記2の要件のうち③(インタラクションの関連すること)を充足するためには、どのような画像である必要があるのかや、どの程度具体的な説明が必要なのかといった基準は、いまだ明確ではないというのが筆者の実務感覚です。
したがって、出願にあたっては、本ガイドラインの具体例を十分に参照した上で、現地代理人とも緊密に連携しつつ、慎重に準備を進めることが求められます。