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知財判決ダイジェスト

特許 令和5年(行ケ)第10121号「撮像装置」(知的財産高等裁判所 令和7年5月15日)

【事件概要】
 本件は、無効審判事件において、「本件無効審判の請求は、成り立たない。」とした審決が維持された事例である。
判決要旨及び判決全文へのリンク

【争点】
 主な争点は、特許請求の範囲の記載がサポート要件に違反しないとした本件審決の判断に誤りがあるか否かである。

【結論】
審決は、発明の詳細な説明によれば、「ヒンジユニットでは、軸A上の一対の第1ヒンジのうち軸B寄りに位置する一方の第1ヒンジが軸B上の一対の第2ヒンジの間に配置されている」ことにより、ヒンジユニットを小型化することができるから、当業者が少なくとも当該発明の課題2(ディスプレイを本体に可動に連結するヒンジユニットを小型化できる撮像装置を提供すること)を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、特許請求の範囲の記載がサポート要件に違反するということはできないと判断した。

これに対し、原告は、本件発明については、ヒンジブラケットの長さがディスプレイのカバーの内部に常に含まれているから、本件発明は、先行技術文献である甲第2号証における発明に比較して、小型化に寄与しないと主張したが、判決は、本件明細書等の記載によれば、甲第2号証に示された従来技術では、本体と連結している「第1ヒンジ」の一方がそれと直交する軸の「第2ヒンジ」の間に配置されていない構造であったため、「第1ヒンジ」間の直方体の空間が空いてしまい、ディスプレイが同じサイズであるとすれば、その直方体の空間の分だけ撮像装置が大型化してしまうという課題があったところ、本件発明は、例えば請求項1において「一対の第1ヒンジの一方は前記一対の第2ヒンジの間に配置されている」との構成を採用することにより、一対の第1ヒンジからなる軸が第2ヒンジの内側に隠れるため、ヒンジユニットが小型化し、ディスプレイが同じサイズであるとすれば、従来技術の第1ヒンジ間に形成される直方体の空間の分だけ撮像装置を小型化できることは明らかであると判示した。

【コメント】
審査基準によると、発明の詳細な説明の記載から複数の課題が把握できる場合においては、特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たすと判断されるためには、そのうちのいずれかの課題を解決するための手段が請求項に反映されている必要があるとされている。本件発明においては、本件発明の課題は、①「一対の第1ヒンジのような機構が、ディスプレイの外側に突出して配置されてデジタルカメラの外側に露呈していると、デジタルカメラの意匠性が損なわれること」(以下「課題1」という。)と、②「デジタルカメラのヒンジユニットでは、一対の第1ヒンジが配置される軸Aは、一対の第2ヒンジの外側で、これら一対の第2ヒンジが設けられる軸Bと交差しており、軸A上の一対の第1ヒンジがディスプレイの外側に突出して配置され、ヒンジユニットがディスプレイよりも大きくなっているという事情に鑑み、ディスプレイを本体に可動に連結するヒンジユニットを小型化できる撮像装置を提供すること」(以下「課題2」という。)であり、課題1については、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明特定事項には、ヒンジユニットを覆う「カバー」に相当する記載がないため、特許請求の範囲の請求項1の記載では、当業者が課題1を解決することができると認識することはできないが、課題2については、発明の詳細な説明によれば、「ヒンジユニットでは、軸A上の一対の第1ヒンジのうち軸B寄りに位置する一方の第1ヒンジが軸B上の一対の第2ヒンジの間に配置されている」ことにより、ヒンジユニットを小型化することができるのである。

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