実用新案 令和7年(行ケ)第10003号「ベッド」(知的財産高等裁判所 令和7年9月30日)
【事件概要】
本件考案1と甲1考案との間に相違点はないから、本件考案1には新規性がないと判断した実用新案登録無効審判の審決が取り消された事例。
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【主な争点】
甲1考案は、本件考案1における「支持脚」を備えているか、及び、甲1考案は、本
件考案1の、支持板と「接続されている」との構成を備えているか。
【結論】
(1)「支持脚」について
ア 本件考案1における「支持脚」の解釈
(ア)「脚」とは、一般的に「形・位置などが動物の足に似ているもの」、「物の下部にあり支えの用に供するもの」を意味し…、住宅用普通ベッドに係る日本工業規格(JIS)においても、ベッドの床面に接する柱状の部材の名称を「脚」と表示していることが認められる…。そうすると、本件考案1における「支持脚」とは、マットレスの下部にあり、マットレスを支える柱状のもの、と解するのが相当である。
イ 甲1考案
…甲1考案に係るベッドは、ヘッドボード及びフットボードの板状の先端が床面に接することによってマットレスを支えており、ほかにマットレスを支える柱状の部材はない。
したがって、甲1考案は、本件考案1の「支持脚」を備えているとは認められない。
(2)「接続されている」について
ア 本件考案1における「接続されている」の解釈
(ア)「接続」とは、一般的に「つなぐこと。つながること。」を意味し、「つなぐ」とは、一般的に「糸・綱などで一か所に物を結びとめて離れないようにすること。」、「切れたり離れたりしているものを続け合わせる。」ことを意味する…。また、本件各考案が、マットレスやこれを支持する部材等をもって構成されるベッドの考案であることに鑑みれば、本件考案1における「接続されている」とは、マットレスと部材、あるいは部材同士が、離れないように続け合わされている状態を意味すると解するのが相当である。
イ 甲1考案
(ア)甲1考案におけるベッドマットレス1は、ベッドフレーム8の一部であるマットレス支持板の上に置かれているだけであり、マットレス支持板と離れないように続け合わされているものではない。そうすると、ベッドマットレス1の底部に固定されたスラット3(本件考案1における「支持板」に相当)が、ベッドフレーム8と離れないように続け合わされているとはいえず、その結果、スラット3は、ベッドフレーム8の一部であるヘッドボード及びフットボードと離れないように続け合わされているともいえない。
したがって、甲1考案は、本件考案1の、支持板と「接続されている」との構成を備えているとは認められない。
(3)本件考案1と甲1考案との対比
…甲1考案は、「支持脚」との構成を備えておらず、この点において、本件考案1と相違している。また仮に、甲1考案におけるヘッドボード及びフットボードが本件考案1の「支持脚」に相当すると解したとしても、これらは、支持板と「接続されている」との構成を備えていないから、本件考案1と相違している。
(4)小括
…本件審決は、本件考案1と甲1考案との間に相違点がないと判断した点において、結論に影響をもたらす誤りがあったものといえる。


【コメント】
被告(実用新案登録無効審判請求人)は、「脚」には柱状だけでなく、板状のものも含まれると主張し、また、甲1考案のベッドマットレス1は、マットレス支持板の上に単に置いてあるだけでなく、四方を囲まれることで位置ずれ等をしない状態をとるものであるから、「接続されている」に当たると主張した。しかし、裁判所は、辞書の記載及び日本工業規格における表示を参照して、実用新案請求の範囲に記載された用語の意義を、いわばその通常の意味に解釈し、被告の主張を採用しなかった。実用新案登録請求の範囲に記載された用語の意義は、明細書及び図面の記載を考慮して解釈するものとされているが(実用新案法第26条で準用する特許法第70条第2項)、明細書又は図面に特段の記載がなければ、その通常の意味に解釈することが妥当といえる。