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知財判決ダイジェスト

特許 令和7年(行ケ)第10028号「商取引システム、管理サーバおよびプログラム」(知的財産高等裁判所 令和8年7月15日)

【事件概要】
 特許無効審判請求を不成立とした審決の取消しを求める訴訟において、本件特許発明(プログラム発明)の発明非該当性及び進歩性欠如を理由とする審決取消請求が棄却された事例
判決要旨及び判決全文へのリンク

【本稿で紹介する争点】
 本稿では、本件特許発明(プログラム発明)が特許法2条1項の「発明」に該当するか否か(発明該当性)という争点についての判断を紹介する。

【裁判所の判断】
 判決は、次のように述べて発明該当性を肯定した。

「 本件特許発明は、その特許請求の範囲の記載によれば、コンピュータに、商品情報を含む登録要求を受信するステップ、この登録要求を通関認証装置に送信するステップ、この通関認証装置から事前通関情報を取得するステップ及びこの事前通関情報を商取引装置に通知するステップを実行させるプログラムである。ここにいう通関認証装置(これと「通関認証サーバ」は同義と解される。)及び事前通関情報の意義については本件明細書に具体的な説明がされている。そして、本件特許発明は、上記の構成を採用することにより、商品購入後の通関手続において通関条件を満たしていないなどの事実が判明して通関業務が増え、物流が停滞するという従来技術の課題を解決し、通関処理の円滑化を実現しようとするものである。

そうすると、本件特許発明は、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとみることができるから、自然法則を利用した技術的思想の創作として「発明」(特許法2条1項)に該当すると認められる。」

【コメント】
 ソフトウェア関連発明の発明該当性について判断した従来の裁判例の多くは、これを、「前提とする技術的課題、その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らし、全体として考察した結果、『自然法則を利用した技術的思想の創作』に該当するといえるか否か」という基準(以下「全体考察基準」という。)に照らして判断していたように思われる(知財高判令和2年6月18日・令和元年(行ケ)第10110号〔電子記録債権の決済方法〕、知財高判平成26年9月24日・平成26年(行ケ)第10014号〔知識ベースシステム〕等)。

他方、特許庁の特許・実用新案審査基準(第III部第1章)及び審査ハンドブック(附属書B第1章)においては、「ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されていること」(以下「ハードウェア資源を用いた具体的実現基準」という。)が発明該当性の判断基準とされている。

本件の審決は、まず上記「全体考察基準」に基づく判断を示した上で、これに加えて、上記「ハードウェア資源を用いた具体的実現基準」による判断も併せて示していた。原告は、取消事由1において、後者の「ハードウェア資源を用いた具体的実現基準」を満たさない旨も具体的に主張して争った。

本判決は、こうした争点構造を受けて、従来の裁判例で見られた「全体考察基準」を明示することなく、課題・効果を簡潔に認定した上で、「ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとみることができる」として発明該当性を肯定した。

従来の裁判例では上記「ハードウェア資源を用いた具体的実現基準」を正面に据えたものは必ずしも多くなかったと思われるところ、本判決は、争点構造に応じたものとはいえ上記「ハードウェア資源を用いた具体的実現基準」を正面から用いて発明該当性を肯定した点で、実務上参考になる。

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