特許 令和7年(行ケ)第10055号「15-ケト-プロスタグランジン類を含む薬物誘発性便秘処置用組成物」(知的財産高等裁判所 令和8年6月23日)
【事件概要】
特許無効審判において進歩性ありと判断した審決を知財高裁が支持した事例である。
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【主な争点】
下記相違点1について、甲3発明(主引例)に基づいて当業者が容易になし得たことであるか。
(相違点1)
本件訂正発明4(最も広範なクレーム)に係る「薬物誘発性便秘処置用組成物」の有効成分である「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノ-またはジ-ハロゲン-プロスタグランジンE化合物」が、本件訂正発明4では「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」(PGE1化合物)であるのに対し、甲3発明(主引例)では「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE2メチルエステル」(PGE2化合物)である点。

【結論】
⑵ 相違点1について
ウ 以上にみた甲3の記載によると、甲3発明は、甲3に記載されている実施例において被験薬とされた19種のPG類のうち、最もエンテロプーリング作用に優れ、かつ、腸管収縮作用が軽微な被験薬8(甲3のPGE2化合物)を有効成分として含有する下剤である。そして、被験薬8、すなわち甲3のPGE2化合物は、甲3において好ましいとされている「5-6位の炭素結合が二重結合」、「炭素数が20から22まで」及び「五員環上の9位にケトンを、11位に水酸基を有する」という態様を全て兼ね備えている。
そうすると、甲3の記載及び技術常識AからEまでを総合しても、甲3に記載された被験薬のうちでエンテロプーリング作用及び腸管収縮作用の点で最も効果が優れ、好ましい態様を全て備えている甲3のPGE2化合物の5-6位の炭素結合を二重結合から単結合に変換し、さらに1位のカルボキシル基をメチルエステル化して、本件PGE1化合物の構成とする動機付けを見いだすことはできないというべきである。
【コメント】
主引例(甲3)において、「最も効果が優れ、好ましい態様を全て備えている甲3のPGE2化合物」と認識されている化合物を敢えて異なる化合物(本件PGE1化合物)に変換する動機付けはないと判示されました。
(知財高裁における第三者意見募集)
この判決により本件特許(特許第4332353号)が維持され、2026年4月9日の知財高裁令和7年(行ケ)第10059号・第10064号判決により本件特許の存続期間の延長登録の無効審判請求も不成立となったことから、知財高裁は、本件特許に係る侵害訴訟である2026年3月3日の大阪地裁判決(令和7年(ワ)第10786号・第10790号:アミティーザ事件)の控訴事件(令和8年(ネ)第10041号)に関して、「延長された特許権の効力が及ぶ物の範囲をどう考えるべきか」等の争点について、第三者意見募集(2026年9月30日まで)を実施しました。
https://www.courts.go.jp/ip/vc-files/ip/20260629%E5%8B%9F%E9%9B%86%E8%A6%81%E9%A0%85.pdf
第三者意見募集の結果を踏まえた知財高裁判決では、知財高判2017年1月20日・平成28年(ネ)第10046号大合議判決(オキサリプラティヌム事件)において、「実質同一なもの」の範囲にまで及ぶとされた、延長された特許権の効力範囲がより明確になることが期待されます。
https://www.courts.go.jp/ip/vc-files/ip/file/yosi_28ne10046.pdf