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[意匠/日本]改正意匠法、いよいよ施行

今月1日に、改正意匠法がついに施行されました。

既に、3月12日に意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引きの改訂版が公表され、続いて3月19日に意匠査基準の改訂版が公表されており、改正意匠法に関する特許庁の考え方なども分かってきました。本稿では、これらの最新の情報も踏まえて、今一度、改正意匠法の主な内容と、実務的な観点からの留意点について説明致します。

1.画像の保護
 旧法下では、物品に固着した(インストールされた)画像について、物品の一部として保護されてきましたが、改正法においては、画像は物品から離れて、画像に係る意匠として保護を受けることができます。

ただし、画像は「機器の操作の用に供される画像」(アイコンや、機器の操作のためのボタンとしての画像など)、あるいは「機器がその機能を発揮した結果として表示される画像」(例えば医療用の測定機などにおいて使用される、測定結果を表示した画像など)に該当しなければなりません。

出願実務においては、画像が使用される物品の図面は必要なく、「画像図」のみを準備すればよいことになります。

<留意点>
従来から認められていた「物品の一部に画像を含む意匠」も引き続き保護対象です。ただし、物品の「縛り」がなくなる分、「画像」の意匠として権利化した方が有利な場面が多いと考えます。

物品の縛りはありませんが、画像に係る用途・機能によって、類否判断が分かれることになります。類否判断の詳細は実際の審査実務の積み重ねを待つよりほかないですが、弊所では、“割と広く”用途・機能の類似性は認められるものと印象を持っております。例えば、意匠審査基準では、「商品在庫確認用画像」として、商品を選択するためのボタンが表れている画像と、「会議室予約用画像」として、会議室を選択するためのボタンが表れている画像については、用途・機能が類似するとしています。

2.建築物、内装の保護
 旧法下では建築物や内装は保護対象ではなかった(組み立て家屋などの例を除く)のですが、改正法においては、建築物や内装の保護が認められるようになりました。

<留意点>
改正法下では、建築物の内部について部分意匠として意匠登録を受けることもできます。そして、その際は、建築物の外観の図面は提出する必要がない場合もあります。そのため、店舗や客室などの建物内部の「インテリア」「空間」のデザインについては、内装の意匠で保護するのか、建築物の内部の部分意匠で保護するのか、それぞれのメリット・デメリットを踏まえながら検討することが大切です。建築物には容易に動かせるテーブル等の家具・什器類を構成要素に含むことができないですが、逆に言うと、複数の物品等を必ず含む必要はありません。一方で、内装は家具・什器類も含めて登録を受ける制度ですが、複数の物品等からなる必要があります。このことから考えると、家具・什器等も含めた空間のトータルの造形に特徴がある場合には、内装の意匠が適しており、床、壁等の大きな構造体の形状等に特徴がある場合は建築物での保護が適していると考えます。

また、気になるのは、どの程度の特徴性があれば登録を受けられるのか?です。明確なことは言えませんが、特許庁では特許・実用新案公報にある建築・内装に係る図面等や、海外主要国の建築・内装に係る登録意匠については、公知資料として収集しているものと思われます。意匠審査基準に掲載されている類否判断の例などから考えると、ある程度、登録性のハードルは高くなるのではないか、という印象を持っています。

3.関連意匠制度の拡充
 意匠制度を戦略的に活用していくための「肝」になる関連意匠制度ですが、ご存じの通り、以下の2本立てで、制度が大幅に拡充されました。

関連意匠にのみ類似する関連意匠の登録が認められる。
基礎意匠(最初の本意匠)の出願日から10年まで、関連意匠の出願が認められる(これを担保するために、「基礎意匠の出願後、関連意匠の出願までに出願人が行った公知行為については、新規性等の判断資料としない」旨の規定も入りました。)

<留意事項>
「新規性等の判断資料としない」という取り扱いは、出願人の行為による公知行為に限定されます。そのため、他者が類似する意匠を公開した場合などは、新規性等の判断資料として取り扱われ、後続の関連意匠が拒絶される場合があります。そのため、重要度の高い製品のデザインについては、旧法制度下の実務と同じく、基礎意匠の出願時に十分なバリエーションを検討し、必要な関連意匠を出願しておくことが望ましいと考えます。

一方、改正法施行前の登録意匠を本意匠(基礎意匠)とした、関連意匠の出願も可能です。これによって、改正前に権利化した意匠権利網の増強が可能になるほか、例えば、改正法施行前に出願した意匠が、自社の先願登録意匠を引用されて拒絶理由通知を受けた場合は、当該引用意匠を基礎意匠とする関連意匠として出願し直すことで、登録を受けられます。ただし、前述の通り、基礎意匠の出願から出し直しによる関連意匠の出願までに、他者によって類似する意匠が公開されていたら、その事実によって拒絶されてしまう点には注意が必要です。また、存続期間も、基礎意匠の出願日(つまり引例の出願日)から25年になりますので、場合によっては所望の権利期間を得られないことになります。そのため、どの時段階で類似の連鎖を断ち切って、新たな意匠群による権利網を構築するのか、という点も、改正法下では重要な視点となります。

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