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[特許・実用新案/日本]2018年3月及び6月の特許・実用新案審査基準/審査ハンドブックの改訂について ~コンピュータソフトウエア関連発明については、基本的な考え方を変更せずに明確化等が図られる~

1.2018年6月の改訂について

2018年6月9日に施行された改正特許法30条の規定を受けて、特許・実用新案審査基準(以下、単に「審査基準」という。)及び特許・実用新案審査ハンドブック(以下、単に「審査ハンドブック」という。)の改訂が行われた。

今回の法改正により、新規性喪失の例外期間は6か月から1年に延長されたが、他の点について実務上で大きな変更はない。そのため、審査基準及び審査ハンドブックの改訂は、主に例外期間の延長に対応させるためのものとなっている。また、特許庁ウェブサイトの「発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続について」のページで提供されている下記の資料についても、改正法に対応させた説明及び質問の追加が行われており、実際の手続きを行う際の参考とすることができる。(⇒ 関連記事はこちら

2. 2018年3月の改訂について

2018年6月施行の改正特許法30条に関連する改訂に先立ち、3月にも審査基準及び審査ハンドブックの改訂が行われており、4月1日以降の審査に適用されている。この改訂はコンピュータソフトウエア関連発明に係るものが中心で、出典(3)では審査基準の改訂のポイントとして次のような説明がある。

  • IoT関連技術やAI等の新たな技術の台頭に伴い、ソフトウエア関連発明が多くの技術分野で創出されるようになってきたため、様々な技術分野の審査官やユーザーが、発明該当性や進歩性についての基本的な考え方が明確に理解できるものであることが求められている。
  • このような状況を踏まえ、ソフトウエア関連発明に係る審査基準について基本的な考え方を変更せずに発明該当性に関する明確化を図った。

これに対応する形で審査ハンドブックの改訂が行われており、進歩性については、単なるニューラルネットワークモデルの適用に過ぎない形で特許請求の範囲として記載されている「鋼板の溶接特性を、ニューラルネットワークモデルを用いて予測する方法(PDF)」を取り上げて、当業者が容易に想到し得たことであると認定される場合が例示されている。

また、発明該当性については、図に示すフローチャートを用いた説明があり、既報の米国における特許適格性の判断手順(特に、ステップ2A及び2B)との着眼点の相違を理解する上で興味深い。

CS関連発明の発明該当性の判断の流れ
※審査ハンドブック付属書B第1章での説明(2.1.1.1~2.1.1.2)はこちら(PDF)

その他、2018年3月の改訂では、附属書D「特許・実用新案審査基準」審判決例集(PDF)に下記に関する裁判例が追加された。

<記載要件関連>

  • (24)-10 プロダクト・バイ・プロセス・クレームの明確性

<新規性・進歩性関連>

  • (52)-6 引用発明(周知技術等を含む)の認定(含:それに関する相違点の看過)
  • (52-1)-4 引用発明を上位概念化して認定すること(PDF)
  • (62)-2 発明の新規性喪失の例外規定(30条)の適用が認められるか否か

これらのうち、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの明確性に関する裁判例(知財高判 平成29年12月21日(平成29年(行ケ)第10083号))は、「本件発明に係る無洗米のどのような構造又は特性を表しているのかは、特許請求の範囲及び本件明細書の記載から一義的に明らかである。」として、物の発明を特定する事項の一部に製造方法が記載されていても明確性要件に違反しないとしたものであり、出願実務において参考になる事例と考えられる。

【出典】いずれも特許庁
(1)「特許・実用新案審査基準-審査基準の追加・改訂について
(2)「特許・実用新案審査ハンドブック-審査ハンドブックの追加・改訂について平成30年3月平成30年6月
(3)「コンピュータソフトウエア関連発明に係る審査基準及び審査ハンドブックの改訂のポイント(PDF)」※リンク切れ
(4)「特許・実用新案審査基準
(5)「特許・実用新案審査ハンドブック

【参考】
特許庁「ビジネス関連発明の最近の動向について
特許庁「「特許・実用新案審査ハンドブック」の改訂について(平成31年1月30日)」※AI関連技術に関する事例の追加、データ構造の発明の事例における説明の明確化等が行われた

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***更新情報(2019年3月6日)***
特許庁ウェブサイトのURL変更にあわせて、【出典】等のリンク先を変更
【参考】に2019年1月の改訂へのリンクを追加

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