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[特許/インド、ブラジル、ベトナム、米国、IP5等]特許審査の国際協力に関する近況(2019年4月) ~特許審査ハイウェイ(PPH)、日米協働調査、PCT協働調査について~

2019年4月15日、日本特許庁は「海外庁における特許審査ハイウェイの実効性に関する調査研究(PDF)」の報告書をウェブサイトで公表した。

同報告書はインドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブラジル、米国、中国、欧州(EPO)、英国及びドイツの11庁における特許審査ハイウェイ(PPH)および早期審査について文献、アンケート等による調査を行ったもので、冒頭の「概要(PDF)」では、調査対象庁におけるPPH等の現状がまとめられている。

また、統計情報分析の概要一覧からなる「総括(PDF)」や、特許査定率、最初の審査結果通知(FA)での特許査定率、PPH申請からFAまでの平均期間、PPH申請から最終処分までの平均期間、平均オフィスアクション回数といった具体的なデータが示されている「統計情報分析(PDF)」などがあり、効率的・効果的な審査を受けるための参考とすることができる。

その他、PPHをはじめとする特許審査の国際協力に関する2019年4月末時点の近況としては、以下の1.~5.を挙げることができる。

1.日本-インド間PPHの試行開始について
既報のとおり、インドとのPPHは2019年度第一四半期の試行開始が予定されており、インドではPPH開始に必要な規則改正案に対する意見募集が2019年1月4日まで実施された。その後、インド特許意匠商標総局(CGPDTM)は「特許実務及び手続の手引(2019)改訂案」を3月に公表したが(ジェトロ提供の日本語記事はこちら(PDF))、その中にもPPHに関する情報はなく、施行の開始時期や運用に関する詳細は庁からの発表待ちとなっている。

2.日本-ブラジル間PPHの対象拡大等について
2019年4月1日に下記を概要とする変更が実施された。

  • 申請対象となる出願の技術分野として、従前からのIT分野及び自動車関連技術を中心とした機械分野に加え、高分子化学、冶金、材料、農芸化学、微生物、酵素などを追加
  • 試行は2019年4月1日より2年間で、申請は200件まで
  • 一出願人あたりのPPH申請可能件数は1か月に1件まで(従前は一出願人あたり4か月に6件)

ブラジルでは、PPH以外の審査早期化手段として早期審査(特許出願に係る発明が侵害されている場合等が対象)、グリーン特許プログラム等もあるが(2017年2月にジェトロより公表された早期審査制度に関する報告書はこちら(PDF))、利用しやすい制度とは言えないため、今回のPPH申請対象の拡大は歓迎できる動きといえる。

また、上述の日本特許庁報告書で示されているデータによれば、ブラジルにおけるPPHの効果は顕著であることから(同報告書での関連ページ(概要のivページ)はこちら(PDF))、PPH申請対象の技術分野に関する出願について、これまでは早期権利化が困難であるために(または、特許権の取得が必要な時期に間に合わないために)ブラジルへの特許出願を見送っていた場合には、必要性を再考する良い機会と考えられる。

3.日本-ベトナム間PPHの申請可能件数の倍増等について
2019年4月1日に下記を概要とする変更が実施された。

  • ベトナム側が受け付ける申請件数は、従前の倍となる年間200件までとし、4月1日~9月30日までで上限100件、10月1日~翌年3月31日までで年間件数200件に達するまでの残件数として設定

しかしながら、4月1日からの申請件数は早々に上限の100件に到達し、受付が停止された。2019年度分の残り100件については10月1日から受付が始まる予定となっているため、ベトナムでのPPHを予定する場合は早めの準備が必要と考えられる。

〈参考図:インド、ブラジル、ベトナムにおける審査請求から最初のオフィスアクションまでの平均期間〉

(伯・印・越)審査請求から最初のオフィスアクションまでの平均期間

~ WIPO IP Statistics Data Center / WIPO statistics database(最終更新:2018年12月)に基づいて作成~

4.日米協働調査試行プログラムについて
別報で取り上げた「日米協働調査試行プログラム」については、「日米協働調査試行プログラム第1期の分析結果(PDF)」が2018年4月8日付けの更新で公表された。同分析結果では、第1期(2015(平成27)年8月1日から2017(平成29)年7月30日まで)の申請件数、日米両庁の判断に関する分析が示されており、下記のようなプログラムを利用するメリットがデータの裏付けを伴う形で示されている。

  • 両庁から早期かつ同時期に最初の審査結果が送付されるため、審査・権利取得の時期に関する予見性が向上する(両庁において追加手数料は不要)
  • 日米の特許審査官の見解が共有されるため、両庁における最初の審査結果において判断が一致する可能性が高まり、両庁のFAに対する応答負担が減少し、より強く安定した権利を得ることが可能となる
  • 日本国特許庁の審査官が最初の審査結果において提示した文献(引用文献及び先行技術文献)につき、米国特許商標庁への情報開示陳述書(IDS;Information Disclosure Statement)提出の負担が軽減する
  • 出願人が技術的に関連する一群の出願をまとめて申請した場合、日米両国の審査官は、最初の審査結果を同時期に発送することになるため、出願人は同時期に一群の出願の審査結果を得ることが可能となる

なお、日本特許庁による説明会でのテキスト(PDF)において示されているデータによれば、日本特許庁(JPO)に対する申請状況は2017年7月31日までの第1期が67件、2017年11月1日からの第2期(再開後)の申請件数が17件(2018年7月1日時点)となっている。

5.PCT協働調査試行プログラムついて
さらに別報で取り上げたように2018年7月1日から開始されていた「PCT協働調査試行プログラム」については、2019年4月1日より日本語によるPCT国際出願も試行プログラムの対象となった。

PCT協働調査の申請に際しては国際出願と同時に申請すること等の手続要件を満たす必要があり、日本語によるPCT国際出願の場合には「仮受理」の通知日から1か月以内に出願書類の英訳文を提出することが必要となる。このように国際出願の前後で出願人に準備負担が生じるが、日米欧中韓(IP5)の5庁が協働して作成した1つの国際調査報告書等を入手できることから、各国移行後の国内段階において円滑な審査を期待できるプログラムとなっている。

なお、試行プログラム開始から2か月程が経過した2018年9月14日、欧州特許庁は主担当国際調査機関として40件以上を受理し、初年度の予定件数に達したと発表した。開始から2か月程で予定数に到達したことになり、欧州における関心の高さがうかがわれる。

【出典】
日本特許庁「外国知的財産制度に関する調査研究報告海外庁における特許審査ハイウェイの実効性に関する調査研究(PDF)」
日本・経済産業省/日本特許庁「日印特許審査ハイウェイ、首脳会談において来年度第一四半期開始で一致
ジェトロ「インド知的財産ニュースインド商工省が特許法規則改正案(2018)を公表(PDF)」
ジェトロ「インド知的財産ニュースインド特許庁の特許実務及び手続の手引(2019)改訂案の公表(PDF)」
日本特許庁「日ブラジル特許審査ハイウェイ試行プログラムについて
ジェトロ サンパウロ事務所 知的財産権部「ブラジルにおける特許出願早期審査制度の現状についての調査(PDF)」
日本特許庁「日ベトナム特許審査ハイウェイ試行プログラムについて
世界知的所有権機関「WIPO IP Statistics Data Center」※各国の審査期間は「Patent」タブでIndicatorから「12 – Average pendency from request for examination to the first office action (days)」を選択し、国等を選択して表示(未収録国・未収録期間あり)
日本特許庁「日米協働調査試行プログラムについて
日本特許庁「平成30年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト国内外で円滑に特許権を取得するために(PDF)」※日米協働調査試行プログラムの申請状況はページ番号19のスライド37
日本特許庁「PCT協働調査試行プログラムについて
欧州特許庁「Quota reached for Collaborative Search and Examination pilot programme

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vol. 83 知財情報戦略室:特許出願の早期権利化手段と審査の国際的な取り組みについて(PDF) 2018-08-01
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