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[特許/日本、米国]日米協働調査試行プログラム、2017年11月1日からの新スキームの概要 ~日米における主な審査早期化手段との比較を交えて~

日本特許庁(JPO)及び米国特許商標庁(USPTO)は、2017年7月31日で一旦終了していた日米協働調査試行プログラム(CSP; Collaborative Search Pilot Program)を、新スキームにて11月1日から再開した。試行期間は3年間で、両庁での申請受理(申請が許可された)件数は年間400件が上限とされている。

CSPの新スキームにおいても日米の審査官がそれぞれに実施した調査結果及び特許性の判断を共有した後に最初の審査結果(FA)を出願人へ送付するという点は変わりないが、旧スキームでは一方の庁が先に調査及び特許性の判断を実施していたところを、下図のように両庁で同時に先行技術文献調査及びFA案を作成する点が新スキームの特徴の1つになっている。

 <図:日米協働調査の進め方> ※出典(1)より引用

20171218topics-JPUS2

そのほか、旧スキーム試行中に要件が緩和された出願公開前の申請は、新スキームにおいても引き続き可能となっている。また、旧スキームでは、USPTO側からJPO側に交換されるFA案はファーストアクションインタービュー制度の「Pre-Interview Communication (PIC)」案であったが、新スキームでは通常のオフィスアクションの案に変更された。

CSPは、旧スキームと同様に審査早期化手段の側面も有しており、FAは申請から6か月以内を目安に出願人に送付され、FA送付後は通常の審査フローに従うこととされている。

審査早期化の効果を比べた場合、米国では、特許審査ハイウェイ(PPH)の申請からFAまでの平均期間は7.28か月でCSPと概ね同等と言えるが、通常は出願からの平均期間が15.7か月であることを考えると、CSPによる審査早期化の効果は小さくない。一方、日本では、早期審査の当該平均期間は2.5か月で、通常は審査請求からFAまでの平均期間が9.5か月であることから、CSPによる審査早期化の効果は大きいとは言えない。しかしながら、CSPでは日米の審査結果を同時期に得られる点で審査の信頼性向上と効率化の面でのメリットがあることから、審査早期化との両立を考える場合には、CSPは有効な選択肢の1つとして検討に値するものと考えられる。

<表:日米特許制度における主な審査早期化手段>

20171218topics-JPUS1b

※クリックすると、拡大表示できます

その他、CSPは上表に示すような特徴を有するが、申請にあたっては日本及び米国双方の要件を満たす必要があることは他の審査早期化手段にはない点と言える。具体的には、「1出願あたり請求項総数20以内、独立請求項3以内であること」、「全ての独立請求項に対し、相手庁において実質的に対応する独立請求項を有する対応出願があること」等があるが、CSP申請のためのその他の要件、FAQ等のプログラムの詳細はJPO及びUSPTO双方のウェブサイトで確認することができる。

なお、2017年6月に開催された第10回日米欧中韓五大特許庁長官会合において、日米欧中韓の特許庁(IP5)は、CSPと同様の進め方をPCT国際段階で実現するPCT協働調査について、2018年5月1日の試行開始を目指すことに合意している。このPCT協働調査では、IP5が協働して、1つの国際調査報告書・見解書を作成し、出願人に提供することが予定されている(【参考】のPCTトピックス参照)。

***追記(2018年4月23日、26日)***
IP5のウェブサイトにおいて、合意時の目標より2か月遅れの2018年7月1日からの試行開始を予定していることが4月19日付けのニュースリリースで発表された。なお、試行の後半には、英語以外の言語によるPCT出願も対象とすることを検討している模様である。日本特許庁も同趣旨の発表を4月26日付けで行った。

***追記(2018年6月1日)***
日本特許庁は2018年6月1日付けでウェブサイトを更新し、PCT協働調査試行プログラムへの参加申請を含む具体的な運用についての資料を公表した。公表された資料によれば、2018年7月1日の試行開始から2018年12月31日までは英語で出願される新規の国際出願について、国際出願時に所定の申請を行うことが必要とされている。一方、2018年12月31日以降は、英語以外の国際出願も受理することが検討されている模様である。(関連記事はこちら

***追記(2019年4月8日)***
日本特許庁は2018年4月8日付けでウェブサイトを更新し、「日米協働調査試行プログラム第1期の分析結果(PDF)」を追加した。同分析結果では、プログラムを利用するメリットのほか、第1期(2015(平成27)年8月1日から2017(平成29)年7月30日まで)の申請件数、日米両庁の判断に関する分析が示されている。

【出典】
(1)日本特許庁「日米協働調査試行プログラムについて
(2)米国特許商標庁「Collaborative Search Pilot Program (CSP)
(3)日本特許庁「特許審査ハイウェイ(PPH)ポータルサイト統計情報」※PPHに関する統計データ
(4)日本特許庁「特許出願の早期審査・早期審理について
(5)日本特許庁「特許行政年次報告書2017年版:第2部第1章 特許における取組 1.審査の迅速性を堅持するための取組」※日本の早期審査に関する統計データ
(6)IP5「IP5 Statistics Report 2016 EditionTable 4.3: STATISTICS ON PROCEDURES」※通常の審査期間に関する統計データ
(7)米国特許商標庁「USPTO’s Prioritized Patent Examination Program」※米国のトラック1に関する統計データへのリンクを含む
(8)米国特許商標庁「Accelerated Examination
(9)米国・Federal Register(官報)「Request for Comments Regarding the Continuation of the Accelerated Examination Program
(10)経済産業省「10周年を迎えた五庁協力における新たなビジョンに合意しました~第10回日米欧中韓五大特許庁長官会合の結果について~」※PCT協働調査について
(11)IP5「IP5 Offices to launch PCT CS&E pilot project
(12)日本特許庁「PCT協働調査試行プログラムについて

【参考】
WIPO日本事務所「その他の知的財産に関するイベント:日本弁理士会PCTセミナー – 2017年5月16日、東京(日本)PCTトピックス」※スライド51ページにPCT協働調査に関する説明

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