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[意匠] 意匠権侵害の損害額算定や機能的形状に関する米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)判決 (※追記あり)

Apple, Inc. v. Samsung Electronics Co., Ltd. (Fed. Cir. 2015) No. 2014-1335, 2015-1029

スマートフォンの知的財産権侵害をめぐるアップル社とサムスン電子社の争いだが、2015年5月18日、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は注目すべき判決を下した。本件では、特許(utility patent)、意匠(design patent)、トレードドレス(trade dress)について様々な争点があったが、意匠権については、次の2点に関する判断が特に興味深い。

1.利益総額(total profit)を損害額として算出することができる

米国特許法289条には、意匠権侵害については侵害者の利益総額を限度として損害賠償を請求することができる旨が規定されている。

サムスン電子は、「アップルの意匠権によってサムスン電子の利益が生じたことをアップルは立証しなければならない」旨を主張した。しかし、CAFCは、289条は、意匠権者に対して、登録意匠にかかる製品から生じる利益総額を損害額とすることを明確に認めており、利益と損害額との間に因果関係の立証は不要である旨を明確に規定しているとし、サムスン電子の主張を退けた。

289条は意匠にのみ適用される規定であり、この規定があるため、米国での意匠権侵害における損害賠償額が非常に高額になる可能性がある。今回のCAFC判決で、この点が改めて明確に示され、意匠権取得が模倣品への強い抑止力になりうることを示したと言える。

2.意匠権の権利範囲の認定に当たり、機能的な部分を除外する必要はない

サムスン電子は、過去のCAFC判決(Richardson v. Stanley Works)を引用して意匠における「機能的な特徴」は意匠権の権利内容から除外されるべきであると主張した。しかし、CAFCは、当該判決は、機能によって決定付けられる多数の構成要素からなる意匠について判断したものであるが、権利内容にはそれらの構成要素の装飾的な面も含まれており、構成要素全体を除外したものではないとし、機能的な特徴からなる構成を完全に除外することを定めたものではないと判示し、サムスン電子の主張を受け容れなかった。そして、サムスン電子のスマートフォンがアップルの意匠権を侵害しているとした地裁の判断を支持した。

一方、トレードドレスに関しては、「外観が有用な効果を奏しないこと」等の厳格な基準をクリアせねばならないとして、地裁に差し戻した。このように、製品の外観を保護するにあたって、トレードドレスによる保護の適用は厳しく判断された一方で、意匠権による保護の優位性は際立つ結論となったことも、本判決で注目すべき点である。

***追記(2016年3月22日)***
本件は上告されていたが、2016年3月21日、米国連邦最高裁は、下記の2つの事項のうち2.のみについて審理することを決定した。

1. Where a design patent includes unprotected non-ornamental features, should a district court be required to limit that patent to its protected ornamental scope?

2. Where a design patent is applied to only a component of a product, should an award of infringer’s profits be limited to those profits attributable to the component?

【出典】
Supreme Court of the United States「Samsung Electronics Co., Ltd., et al. v. Apple Inc. (No. 15-777)

***追記(2016年8月4日)***
上告審の口頭弁論が2016年10月11日に開催されることとなった。直近の知財関連事件に対する最高裁判決と同様のスケジュールであれば、口頭弁論から約3~4か月後の2017年初頭から春までには判決が下されるものと考えられる。

【出典】
Supreme Court of the United States「Oral Arguments | Argument Calendars | OCTOBER TERM 2016 For the Session Beginning October 3, 2016

***追記(2016年12月7日)***
現地時間の2016年12月6日、最高裁は、意匠権侵害における損害賠償額について、製品全体ではなく、当該製品の部品(審理事項2.における「component of a product」)のみに基づいて算出することを認め、上述のCAFC判決を破棄し、差し戻した。

【判決文】
Apple, Inc. v. Samsung Electronics Co., Ltd. (No. 15-777)

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