[商標/日本]商標審査基準〔改訂第17版〕が公表
2026年2月27日、商標審査基準〔改訂第17版〕が公表されたので紹介する。
1.改訂ポイント
(1) 商標法第4条第4項のコンセント制度において、以下の2つの場合には「混同を生ずるおそれがない」と判断されうることが明確化された。
- 出願人と先行登録商標権者に支配関係があるなどの場合、「出所の混同のおそれ」がないものとして取り扱う。
- 両商標に係る商品・役務の出所が実質的に同一である場合、「出所の混同のおそれ」がないと判断する。
具体的には、審査基準同条同項「4.『混同を生ずるおそれがない』について」の段落に、新たに「(3) 支配関係の存在により混同を生ずるおそれがないものとして取り扱う場合」の記載が挿入され、①~③の3つの場面が例示された〔*出典1, 2〕。
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改訂後 |
改訂前 |
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4.「混同を生ずるおそれがない」について (中略) (3) 支配関係の存在により混同を生ずるおそれがないものとして取り扱う場合 出願人と引用商標権者が次のいずれかの関係にあるときは、混同を生ずるおそれがないものとして取り扱う。 ① 引用商標権者が出願人の支配下にあるとき。 ② 出願人が引用商標権者の支配下にあるとき。 ③ 出願人と引用商標権者が同一の者の支配下にあるとき。 |
4.「混同を生ずるおそれがない」について (中略) (新設) |
また、「混同を生ずるおそれがない」ことについての考慮事由として、「(イ) 商品等の出所が実質的に同一であり、混同を生ずるおそれがないと判断するか否かの考慮事由」が追記された〔*出典1, 2〕。
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改定後 |
改定前 |
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4.「混同を生ずるおそれがない」について (中略) (4) 考慮事由 (ア) (中略) (イ) 商品等の出所が実質的に同一であり、混同を生ずるおそれがないと判断するか否かの考慮事由 出願商標の使用をする商品等の出所と、第4条第1項第 11 号の他人の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品等の出所が実質的に同一である場合は、混同を生ずるおそれがないと判断する。この場合、商品等の出所が実質的に同一か否かは、例えば、下記の①から③のような、両商標に関する具体的な事情を総合的に考慮して判断する。 ① 出願人と引用商標権者の関係性 ② 商標の使用をする商品等に係る事業の実施状況 ③ 商標の使用態様その他取引の実情 |
4.「混同を生ずるおそれがない」について (中略) (3) 考慮事由 (中略) (新設) |
(2) 上記改訂に伴い、これまで第4条第1項第10号及び第11号に記載されていた「支配関係がある場合の取扱い」に関する内容は削除された〔*出典1, 2〕。
なお、改訂された「商標審査基準」〔改訂第17版〕は、2026年4月1日以降の審査に適用される〔*出典2〕。
2.改訂の背景
2024年4月1日施行の改正商標法により「コンセント制度」が導入された。これは、商標法第4条第1項第11号(他人の登録商標と類似)に該当する商標であっても、先行登録商標権者の承諾(コンセント)を得ており、かつ、先行登録商標と出願商標との間で混同を生ずるおそれがないものについては、商標登録を認める制度である。
同制度を適用した事例には、出願人と先行登録商標権者の合意内容等を踏まえ、両者が市場において棲み分けられていることから混同を生ずるおそれがないと判断したものがある一方、出願人と先行登録商標権者の関係性、又は出願人と先行登録商標権者が共に関与する事業の実施状況に着目し、商品又は役務の出所が実質的に同一であることから混同を生ずるおそれがないと判断した事例もある〔*出典3〕。
しかし、後者について、出所の混同のおそれがないものとして取り扱う旨やその具体的な基準について、従来の第4条第4項の審査基準には明記されていなかった。今回の改訂では、これらの取り扱いが明確化された。
もっとも、今回の改訂前であっても、出願人と引用商標権者の一方が他方の支配下にある場合には、混同を生ずるおそれが低いこと等を理由として、例外的に第4条第1項第11号(他人の先行登録商標と類似)の拒絶理由に該当しない旨を認めていた〔*出典2, 4〕。
そのため、今回の改訂では、コンセント制度が整備されたことを踏まえ、上記の取扱いを「出所の混同のおそれがないもの」として整理するとともに、コンセント制度が整備されるまでの過渡期において暫定的に運用され、改訂後の同号の審査基準上に記載する必要がなくなった内容は削除された〔*出典2, 4〕。
なお、第4条第1項第10号(他人の未登録周知商標と類似)の審査基準においても同様の取扱いが準用されていたが、適用される事例が著しく乏しく、審査基準に明記する必要がないとの理由から、当該記載も削除された〔*出典2, 4〕。
3.コメント
商品又は役務の出所が実質的に同一である場合、又は出願人と先行登録商標権者に支配関係等がある場合としては、例えば親会社と子会社の場合、又は同一グループ内の子会社同士の場合が考えられる。これらの場面では実質的に出所の混同のおそれはないと考えられるため、審査基準において明記されたことで、今後コンセント制度の活用が一層期待できる点は歓迎すべきである。
なお、「商品又は役務の出所が実質的に同一」か否かは、様々な事実を総合して判断される点に留意すべきである。すなわち、出願人と引用商標権者の関係性はあくまで考慮要素の一事実にすぎず、商標を使用する商品等に係る事業の実施状況、商標の使用態様その他取引の実情も引き続き重要となることに留意したい。
〔出典・参考〕
- 特許庁「商標審査基準〔改定第17版〕」
- 特許庁「商標審査基準〔改訂第17版〕について」
- 特許庁「産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会 第37回商標審査基準ワーキンググループ 配付資料」
- 特許庁「「商標審査基準」改訂案に対する御意見の概要及び御意見に対する考え方」