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[特許・実用新案・意匠/中国]改正専利審査指南 2026年1月1日施行(第5回) ~進歩性及びビットストリーム関連発明編~

 既報の第4回では、特許権の存続期間の補償に関する改正点を解説した。今回は進歩性及びビットストリーム関連発明に関する改正点を解説する。

1.進歩性(第二部分第四章6.4節)
 今回の改正により、進歩性の判断において、課題の解決に寄与しない特徴の取り扱いが明文化された。

(1)改正の背景
 従来、審査官によっては、拒絶理由通知書において、「進歩性を判断する際、課題の解決に寄与しない特徴を考慮しない」との見解を示す場合があった。しかし、この見解の根拠は、審査指南には規定されていなかった。

(2)改正の内容
 今回の改正により、進歩性の判断において、課題の解決に寄与しない特徴は考慮されない取り扱いが明文化された。また、この取り扱いへの理解を深めるための事例が示された。

 この事例は、進歩性欠如の拒絶理由に対し出願人が新たな特徴を追加したケースである。しかし、追加された特徴は課題の解決に寄与しないため、進歩性の判断において考慮されなかった。

事例:カメラに関する発明

<経緯>
出願当初の明細書の記載
 解決しようとする課題:シャッターをより柔軟に制御すること。
 課題を解決するための手段:カメラ内部の機械構成及び回路構成の改良
拒絶理由
 出願当初の請求項に係る発明が進歩性を欠く。
出願人の対応
 上記の拒絶理由を解消するため、カメラの筐体形状表示画面の大きさバッテリー収納部の位置などの特徴を請求項に追加した。

<結論>
 追加された特徴は課題の解決に寄与しないため、進歩性の判断において考慮されない。

<理由>
課題解決との関連性に関する記載の欠如
 明細書には、追加された特徴が本願の課題の解決にどのように関連するかについての記載がない。
設計事項への該当
 追加された特徴は、請求項の主題に照らして当然に含まれる通常の構成要素であるか、又は当業者が技術常識や通常の実験に基づいて得ることができるものである。
効果の裏付け(証拠・理由)の欠如
 出願人は、追加された特徴が本願発明にさらなる効果をもたらすことを裏付ける証拠、又はそれを説明する十分な理由を提出していない。

(3)改正の趣旨及び影響
 中国国家知識産権局(以下、CNIPA)によれば、改正の趣旨が以下のとおり説明された。
 ・審査の質及び効率をさらに高めること
 ・出願人に対し、出願段階で提出する書類において発明の本質を十分に説明するよう促すこと
 なお、この改正は、進歩性の判断の根本的な枠組み(例えば、審査指南の第二部分第四章3節等に規定する審査の原則・基準)を変更するものではないとされている。

 また、現地代理人によれば、この改正により進歩性の判断がより厳しくなる可能性があるとのことである。従来の審査実務では、課題の解決に寄与しない特徴であっても相違点とされ、進歩性の判断において考慮される余地があったが、改正後はそのような特徴が考慮されなくなるためである。

2.ビットストリーム関連発明(第二部分第九章7節)
 今回の改正により、審査指南の第二部分第九章に新たな節が設けられた。新たな節には、ビットストリーム関連発明について、発明該当性に関する判断基準(審査官向け)及び明細書・請求項の作成指針(出願人向け)が定められた。

(1)改正の背景
 ライブ配信やVR等のストリーミングメディア産業が急速に発展する中、その中核技術の一つであるビットストリーム関連発明を適切に保護するニーズが高まっている。しかし、従来の審査指南の一般規定のみでは、ビットストリーム関連発明の審査に十分に対応できないという課題が、産業界から指摘されていた。

(2)改正の内容
 1)発明該当性に関する判断基準
 7.1節では、発明該当性に関する判断基準が、要件の形としてではなく、請求項のパターンごとに✕(発明に該当しない)/〇(発明に該当する)で示されている。


※構文要素(中国語で「语法元素」)は、ビットストリーム分野における情報の構成単位である。

 2)明細書の作成指針
 7.2.1節では、以下のように明細書の作成指針が示されている。

 ①実施可能要件の充足
 ビデオ符号化方法に基づくビットストリーム関連発明に関しては、ビットストリーム関連発明自体のみならず、その基礎となるビデオ符号化方法についても、当業者が実施できる程度に明確かつ十分な説明を明細書に含めなければならない。
 ②サポート要件の充足
 主題がビットストリームの記録方法、伝送方法、又は記録媒体である発明に関しては、請求項をサポートするための説明を明細書に含めなければならない。

 3)請求項の作成指針
 7.2.2節では、請求項の作成指針が示されている。具体的には、ビットストリームの記録方法、伝送方法、又は記録媒体に関する請求項について、①ビットストリームを生成するビデオ符号化方法に関する請求項を引用する形(以下、請求項を引用する形)、又は②当該ビデオ符号化方法に関する請求項の全特徴を含む形(以下、全特徴を含む形)で作成しなければならない。

 また、実務上最も一般的と考えられる①請求項を引用する形について、以下の記載例が示されている。

【請求項1】ビデオ符号化方法であって、
 フレーム分割ステップと、...
 エントロピー符号化ステップと、を含む方法。
...

【請求項5】ビットストリームを記録する方法であって、
 請求項1に記載のビデオ符号化方法を実行してビットストリームを生成し、前記ビットストリームを記録する方法。

【請求項6】ビットストリームを伝送する方法であって、
 請求項1に記載のビデオ符号化方法を実行してビットストリームを生成し、前記ビットストリームを伝送する方法。

【請求項7】コンピュータプログラム/命令及びビットストリームが記録されているコンピュータ読取可能な記録媒体であって、
 前記コンピュータプログラム/命令がプロセッサにより実行された場合、請求項1に記載のビデオ符号化方法が実現され前記ビットストリームが生成されるコンピュータ読取可能な記録媒体。

 CNIPAの改正説明によれば、請求項のカテゴリーに応じて、上記の記載例における下線部の特徴を含めることが必須とされている。なお、これは、①請求項を引用する形だけでなく、②全特徴を含む形を採用する場合にも同様である。

 上記を整理すると、下表のとおりである。その中の記載要件を満たさない場合には、CNIPAから指摘を受けるリスクがある。

【出典】
1.CNIPA「关于修改《专利审查指南》的决定(局令第84号)
2.CNIPA「关于修改《专利审查指南》的说明
3.CNIPA「2025年《专利审查指南》修改内容解读
4.CNIPA「关于《专利审查指南修改草案(征求意见稿)》的说明」等

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