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[商標/中国]中国商標法改正の概要と実務への影響

2026年6月26日、第14期全国人民代表大会常務委員会第23回会議において、新たに改正された「中華人民共和国商標法」が可決・成立しました。本改正法は2027年1月1日より施行されます。

今回の改正は、商標分野における顕在化した課題への対応を目的としており、従来の「商標登録重視」から、「商標の実際の使用の強化」「悪意のある抜け駆け出願および商標の買い占め行為の取締り強化」「商標使用行為の規範化」「ブランドのグローバルな保護の強化」へと大きく方向転換しています。

【全体像】
新法は従来の73条から14条増加し、全9章・87条の構成となりました。特に注目すべきは、新たに「商標登録の要件」という章が設けられた点です。旧法では各章に分散していた「商標の定義」「使用の定義」「絶対的・相対的拒絶理由」などが体系的に集約・整理され、法律全体が分かりやすくなり、実務家にとっても要件の確認が容易になるという構造的なメリットが生まれました。

【主な改正点】
今回の改正では、多岐にわたる重要な変更が行われました。主なポイントは以下の通りです。

1.悪意ある商標出願の規制強化と処罰
使用目的がなく、正常な事業活動の必要を明らかに超えた商標出願は登録が認められないことが明確化されました。さらに、悪意のある抜け駆け出願や溜め込み出願に対して、最高10万元の過料を科す行政処罰が新設され、不正な出願への抑止力が大幅に強化されています。

2.馳名商標(著名商標)の保護強化
馳名商標の中国での登録の有無を問わず、非類似商品・役務であっても公衆に誤認を生じさせ利益を害するおそれがある場合、全区分で保護されるようになりました。また、中国企業が海外で商標紛争に直面した場合に、国家知識産権局へ公式の馳名商標認定を申請できる制度も新設されました。

3.新たな商標タイプの追加とオンライン使用の明文化
デジタル経済下のニーズに対応し、「動き商標」が新たに登録対象として追加されました。また、商標の使用概念が拡張され、ECサイトやSNSなどインターネット上での使用も有効な商標使用行為として法律上明確に認定されるようになりました。

4.手続きの迅速化と合理化
初歩査定公告後の異議申立期間が従来の3ヶ月から2ヶ月に短縮されました。また、商標消滅後1年間は同一・類似商標の登録を認めないという制限について、対象が「商標登録者が自ら抹消を申請した場合」のみに限定され、市場のニーズに合わせた柔軟な対応が可能となりました。

5.指示的合理使用(正当な使用)の導入
商品の用途や真実の出所を示すためだけに他人の商標を使用する「指示的合理使用」の合法性が明文化されました。これにより、混同を生じさせない範囲での正当な情報提供が保護され、企業の法的リスクが軽減されます。

6.不適正使用の取締りと職権取消
公衆を誤認させる使用や無断での登録事項変更に対する罰則が強化されました。さらに、3年不使用や普通名称化した場合に、行政機関が職権で登録を取り消すことができる制度が新設され、使用実態のない「ゾンビ商標」の整理が進むと期待されます。

7.損害賠償と権利保護の整備
懲罰的損害賠償の主観的要件が「悪意」から「故意」に変更され、他の知的財産権関連法との整合性が図られました。また、賠償請求における「3年不使用の抗弁」の起算点が「提訴前」から「侵害行為発生前」に厳格化され、賠償目的のアリバイ的な商標使用が防止されます。

【企業がとるべき実務対応】
今回の改正を受け、企業は以下の実務対応を急ぐ必要があります。

防御的登録の戦略見直しと証拠保全
「とりあえず全区分で登録する」といった大規模な防御的登録は、悪意の買い占めと認定されたり、職権で取り消されたりするリスクが高まります。不要な商標は自ら抹消を申請し、使用中の商標については、パッケージやECサイトの画面などの使用証拠を体系的に保管し、職権取消に備える体制構築が不可欠です。

宣伝用語の自主点検
誤認させる使用への罰則強化に伴い、パッケージやSNSでの宣伝文句に消費者を誤認させやすい誇張表現がないか点検し、必要に応じて修正・削除を行うコンプライアンス管理が求められます。

ウォッチング体制の強化
異議申立期間が2ヶ月に短縮されたため、他社の抜け駆け出願や模倣商標を早期に発見し、迅速に対応するための商標ウォッチング体制の強化が急務です。

訴訟における使用証拠の準備
侵害訴訟を提起する際は、「侵害行為発生前」に商標を実際に使用していた証拠の準備が必要です。逆に訴えられた場合は、相手方の商標がゾンビ商標であることを立証できれば強力な抗弁手段となるため、相手方の使用実態調査がより重要になります。

名称・住所変更の早急な手続き
登録事項変更に対する罰則が強化されるため、商標権者の名称・住所等が変更された場合は、過料や商標取消のリスクを避けるため、早めに変更登録手続きを行うことが望ましいです。

2027年1月1日の新法施行に向けて、企業は自社の商標ポートフォリオと運用実態を見直し、新たな法制度に適合した知財戦略を再構築することが求められます。

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